
同社はなぜこのような本業の革新を実現することができたのか。革新のドライビングフォースになった要素として3つが考えられる。
第1に、「経営者の高い目標と強い意志」である。冨澤社長は、2000年の決算説明会において2007年までに業界No.1になることを宣言していた。しかし、2005年の時点で、まだトップ企業とは売上規模で水を開けられていたことから、2年後までに業界No.1になる目処は立っていなかったという。
しかし、冨澤社長はその目標を決して諦めることなく、No.1になるために何をしなければならないか、消費者の支持を得るためには、あるいは他社と差別化するためにはどういう店づくりやサービスをすべきか、コストを削減するためにはどういう工夫がありうるのかを考え続け、実際に都度そのアイデアを試行し続けてきた。「眼鏡市場」という業態コンセプトは、そのような取り組みのなかから一つの形として確立されたものである。高い目標に向けた強い意志、言うなれば良い意味での経営者の執着心なくして、この本業の革新はなしえなかったと考えられる。

第2に、「コミュニケーションとリーダーシップ」である。冨澤社長は、2005年から2006年にかけて全店舗への社長訪問(各店2回の訪問)を実施し、すべての従業員との直接対話や、従業員と一緒になった店舗清掃など、従業員との距離を縮めている。この取り組みは、消費者のニーズを含め、現場の生の声をバイアスなく把握することに大きく役立ったという。
社長と従業員の対話により、社長への現場の信頼が形成され、また社長の考えることが現場に直接伝わるようになり、着実に現場サービスが改善されている。「眼鏡市場」業態のサービスには、この時に改善されたサービスが受け継がれている。これら現場改善の積み重ねがなかったならば、今の「眼鏡市場」への顧客の支持はなかったともいえる。
第3に、「顧客視点での事業コンセプトの探求」である。冨澤社長が「眼鏡市場」という業態コンセプトにたどり着いたのは、消費者にとって「メガネトップ」はどういう存在なのか、何に不満をもっているのかを徹底的に突き詰めた結果といっても過言でない。顧客視点で現状のビジネスを捉え直す。顧客から発想するというこの思考アプローチが、どの高品位レンズを選んでも一式一律価格という従来にない事業コンセプトを生み出す原動力となっている。
この顧客視点でのビジネスの捉え直しと、業界No.1になるという高い目標があったからこそ、本業革新すなわち従来の主力業態の自己否定を可能にしたと考えられる。
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