経営者の智恵袋

2.社員が行動しない2つの理由

行動科学では、結果である業績は社員が行動したかどうかに規定されると考える。であるならば、社員がなぜ行動しないのか。その理由を突き止めることが重要となる。『短期間で組織が変わる行動科学マネジメント』の著者である石田氏は、社員が行動しない理由は二つしかないと指摘する。
第一に、「行動の仕方が分からない」場合である。経営者やマネジャーが売上を上げろといくら発破をかけたところで、言われた社員の方が売上を上げるためにしなければならないことを分かっていなければ、決して行動には結びつかない。業績は行動の結果に他ならないとする行動科学の考え方に基づけば、そのような状態である限り、売上向上は全く期待できないということになる。この問題を解決するためには、経営者もしくはマネジャーが売上を上げるために行動すべきことを見極め、それを社員に手順として具体的に示す必要がある。
第二に、「何をしなければならないかは分かっているが、社員にとってその行動が続かない」場合である。このようなケースでは、行動を反復させるための仕掛けが必要となる。行動の継続は「当人がそうしたいと思う」状況をつくることが最も重要であり、そのためにはポジティブかつタイミングのいい褒賞や報奨が鍵を握るとする。取組むべき行動を見極めて、その行動の反復を促し、行動した者は行動回数に応じて褒賞もしくは報奨する。これら一連のプロセスを日々のマネジメントに取り入れることによって、行動していないためにパフォーマンスが十分でない人材の行動を促し、引いては全社業績の向上につなげることができるというわけである。

3.行動と意識づけを管理する

行動科学マネジメントにおけるパフォーマンス・マネジメントの基本は、業績に直結する行動を見極めて、その行動を定着させる。定着させるために、社員が行動をとった場合にタイミングよく褒めるである。パフォーマンス・マネジメントという言い方はしているものの、パフォーマンスそのものを管理するのではなく、パフォーマンスを規定する「行動」と「意識づけ」を管理するのである。
例えば小売業において、売上面で優秀な2割の店舗では、売れ筋商品をボリューム感をもって最も目立つところに陳列できている一方で、平均以下の店舗ではそれができていないとする。平均以下の店舗でも、そうできるかどうかが全体のパフォーマンス向上の鍵を握るわけである。店長に対して売れ筋商品重視の売場づくりのライン指示を出す。更に、指示した陳列が日々着実に実行されているかどうかモニタリングする。これが「行動」の管理である。
一方、その行動を定着させるには、意識づけの管理の観点が重要となる。例えば、指示を出すのみならず、経営者やマネジャーが自ら店舗に足を運び、なぜそうしなければならないのか説明する。理解できているかコミュニケーションを取りつつ、別途会議の場でも改めて解説する。後に実行状況を評価するために、実行状況の可視化(ポイント化等)方法を含めて評価方法を決める。週次、隔週といった頻度で実行状況の評価を行い、着実に実行されている場合は、対象者を褒賞する。これが「意識づけ」の管理である。
心理学的な点を考慮すれば、褒賞は対象者が忘れないうちに、真に喜ぶ方法で行なうのが重要とされる。また、ゲーム感覚で社内で競わせるような方法で評価・褒賞を行なうといった手法も、意識づけの点では有効となろう。

図表2 行動と意識づけのマネジメントの枠組み

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