経営者の智恵袋

2.企業の内部(経営者)から見た場合の論点

以上を踏まえて、主に参考文献*1を参考にして、企業の内部(経営者)から見た場合の論点、つまり企業不動産について企業の経営者が取り組むべき課題を整理したい。これまでの管財としての不動産管理からは、発想を転換する必要があることは言うまでもないが、さらに各種の事例を踏まえると、経営者が取り組むべき課題は下記のように整理できる。

  1. 企業価値向上のための資源として捉える

    まず重要なのは、不動産の捉え方を変えることである。前記の社会背景や企業の外部(投資家)からの視点を踏まえると、不動産について、事業のために必要な物理的資産や蓄財の対象という従来の捉え方にとどまらず、企業価値に対して直接的・間接的な影響を与える経営手段のひとつとして捉える必要があるだろう。具体的には、所有と賃借の比較、不動産価値最大化の用途検討、証券化の可能性検討など、あらゆる選択肢を検討して、企業価値向上に資する最適な選択を行うことが必要であると考えられる。これが典型的な「CRE戦略」であると言えるだろう。
    保有不動産に対する方針策定基準の簡単な例として、企業自身にとっての重要度(使用価値)と市場性(市場での時価)の2軸で整理したマトリクスを示す(次図)。

    図1 保有不動産に対する方針(例)
  2. 「マネジメント」の仕組みの構築

    企業価値向上に向けて「CRE戦略」を実施するにあたっては、意思決定を客観的、再現可能的に行えるよう、定量化、マニュアル化等を含めたマネジメントシステムを構築することが必要であるとされる。より一般的な言葉を使うと、不動産のマネジメントについて、いわゆるPDCA(Plan、Do、Check、 Action)サイクルの導入が必要だということである。意思決定の仕組みや、あらかじめ定められた評価基準に照らして定期的に戦略や施策を見直す仕組みを整備することが必要になるが、優良企業であれば、ISO 9001(品質マネジメントシステム)等を含め、不動産マネジメント以外の分野で自社内に存在する「ガバナンス」や「マネジメント」を参考にして、仕組みの整備を行うことができるだろう。 (下記事例2、7、8をご参照)

  3. ITの活用

    企業不動産に対する的確及び適時の評価・判断を行うためには、それを支援する各種ツール活用の検討も必要となる。昨今のベストプラクティスとしては、下記のような点についてのITやデータベースの活用が紹介されている。

    1. 自社の不動産に係る情報の一元管理(各不動産の基本情報、保守等の支出、賃料収入など)
    2. 土地売却、資産入替え等のCRE戦略遂行のシミュレーション(企業会計への影響等)
    3. 賃料水準等のマーケット情報の収集と分析(自社で支払いまたは受領する賃料との比較等)

    もちろん、IT活用の常として、導入前の費用対効果検討や、導入後の有効活用をきちんと継続することは重要だ。それらがなされないと、無駄な投資や宝の持ち腐れといった問題が発生する。
    (下記事例1、7をご参照)

  4. 必要に応じた組織や会社全体の再編

    以上のように企業不動産に対する取り組みを変え、全社的視点に立った「CRE戦略」を策定し実践していくには、専門性の集約や補完、意思決定の流れや戦略事業単位の組み替え等とともに不動産専門部署の設置・拡充やアウトソーシング、会社分割、グループ会社の統合等を伴った組織再編を行うことが適切となる場合もある。
    (下記事例1、2、3、4、5、6をご参照)

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