経営者の智恵袋

1.前回の整理

前回の「企業不動産からCRE(注)へ その1」では、急速に注目が集まっている「CRE(企業不動産)」や「CRE戦略」という概念について、その背景を検討した上で、企業にとっての外部ステークホルダーである投資家の視点による論点整理を試みた。
まず、最近の日本において、企業が保有・利用する不動産の保有(投資)形態や管理手法を最適化することの重要性が盛んに議論されるようになっていることの主要な背景として、下記3点を挙げた。

  1. 減損会計の適用をはじめとして、近年、企業をとりまく各種制度の改変が続いている
  2. 保有不動産の有効活用やリスクの抑制を含めた、企業価値向上(ROA、ROE、WACCの観点)に対する株主からのプレッシャーが高まっている
  3. 証券化等の手法の普及やJリート、私募ファンドの規模拡大など、不動産の有効活用や処分における受け皿が整い、不動産の流動性が高まると共に手法の選択肢が広がった

(注)「CRE」とは、企業が保有する不動産や事業で使用する(賃借を含む)不動産(Corporate Real Estate)を意味し、「企業不動産」という訳語をあてるのが一般的である。

上記2の補足として、下記の4点を投資家の視点による論点として挙げた。いずれの論点も、企業の経営者に対し、企業価値向上の一環としての企業不動産の有効活用や管理手法の最適化を考えさせる大きな要因となっていると思われる。

  1. 株主価値に対する株主の意識の高まりとともに、経営陣も常に株主価値のプレッシャーを意識しながら経営にあたっている中で、保有不動産が有効に活用されているかどうかを含め、いかなる「CRE戦略」がとられているかどうかは、経営陣と株主が共有すべきチェックポイントになるであろう。
  2. 保有不動産の有効活用への取り組みが不十分であったり、十分な合理性がなく不動産を保有していたりすると、いわゆる村上ファンドや㈱ダヴィンチ・アドバイザーズのような、不動産価値に着目した投資家が行動を起こす可能性がある。
  3. バランスシート中の不動産比率が高い企業については本来事業の事業価値と不動産価値が混在した状態であり、投資家としては、何のリスク・リターンをとっているのかが不明確となる。これにより、いわゆるコングロマリット・ディスカウントのような状態になり、企業価値が最大化されていない可能性がある。
  4. 不動産保有には、価格下落をはじめとする様々なリスクが伴うことから、投資家の観点からは、大量の不動産を保有している企業は、それ自体でハイリスクの(従って理論的にはハイリターンが要求される)事業を抱えているように見える。

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