
フロリダ教授によって提唱されている「クリエイティブ・クラス」という概念を一般化、普遍化した場合に、ビジネスモデルも事業環境も異なる様々な企業にとってどういう意味を持っているといえるだろうか。下記1~3に分けて、弊社なりの考察を示してみる。
人間ひとり一人がクリエイティブであり、まだ引き出し得ていないクリエイティビティを引き出すことが重要なのであって、「クリエイティブ・クラス」が特定の専門職に就いている人々だけを指すのではない、というのがフロリダ教授の主張であるということは既に述べた。それでは、企業においてクリエイティビティを発揮している人、引き出されている人とは、いかなる人であろうか。弊社としての定義は、「経営者または上司と、双方向のコミュニケーションができる人」というものである。指示待ち、あるいは受身で、コミュニケーションが常に一方通行になっているような人々ではなく、経営者や上司に対して繰り返しクリエイティブな提言ができるという意味で、双方向のコミュニケーションができる人々、それが企業における「クリエイティブ・クラス」であると考える。
「クリエイティブ・クラス」を上記のように定義した場合、企業においてその必要性に異論はないと思われる。あえて説明をつけるとすると、次のような議論ではないか。現代社会では企業の業種を問わず、事業環境が激変を続けているといえるが、そこで問われるのは、ぶれないビジョンを持ちつつも、臨機応変に対応する力であろう。そして臨機応変の対応をし続けるためには、経営者ひとりの発想では限界がある。そのような状況の中で、経営者や上司に対して繰り返しクリエイティブな提言ができる、つまり、双方向のコミュニケーションができる人々が必要であることは明らかだろう。
企業は、「クリエイティブ・クラス」を1.惹きつけ、2.育て、3.放さない、ということを通じて他社と競争をしていると前節に書いたが、これら1~3のうち、「育てる」ということが最も時間のかかる難しい取り組みになるだろう。ある企業において「クリエイティブ・クラス」を育てる、つまり「クリエイティブ・クラス」に属する従業員を、全体の五割、七割、九割、と広げていくと同時に、既にクリエイティビティを発揮している従業員のやる気を継続的に向上させることを考えてみよう。一般的な企業で、最終的に、現場の隅々の従業員まで、経営者と直接の双方向コミュニケーションやクリエイティブな提言ができる状態になることをイメージするのは現実的ではない。経営者がまず行うべきことは、企業のビジョンや戦略を因数分解し、組織ピラミッドの各階層において、従業員それぞれの責任と権限に応じた、少し難易度が高めの課題(成果目標および目標達成のためのプロセス)が与えられるようにすることだ。別の言い方をすると、ある特定の従業員が、トップダウンで示された会社全体またはある事業部全体の大きな経営方針(目標、施策、ルール等)の下で、その職務上において関連する上司、部下、同僚等の従業員と、「共通の言語」でコミュニケーションできることを前提として、それぞれの役割に応じた「物差し」で定量的、定性的を問わず計測される指標の最大化のために、昨日とは異なった仕事の仕方を継続的に考えて行動できる環境を整えることである。この積み重ねによって、より多くの従業員が、それぞれの上司と、また上級管理職は時として経営者と直接、双方向のコミュニケーションを行って、事業環境の変化に応じたビジネスの臨機応変な変革が可能となっていくことだろう。つまり、企業において「クリエイティブ・クラス」を育てるということの意味は、まずは経営者のレベルで会社の方向性を明確に発信かつ共有し、現場に近づくに従ってその方向性をそれぞれの役割ごとに因数分解し目標化またはプロセス化できていることではないかと考える。
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