
フロリダ教授は地域経済開発論が専門ということもあって、主として企業間ではなく、国家間、都市間の競争力を比較している。企業間の比較にもあてはまる点がありそうなので、以下では、フロリダ教授が各国の競争力についてどう考えているかをご紹介する。
教授は、まずクリエイティビティを構成する要素を主に、「技術(Technology)」、「才能(Talent)」、「寛容性(Tolerance)」であると定義した上で、この「3つのT」理論により、関連する国際的な統計データを複数使用して、最終的に各国のクリエイティビティを指数化して比較している(図1)。フロリダ教授は、20世紀における米国の経済成長の鍵を、常に新しいアイデアを受け入れてきたこと(そのことによりクリエイティブな能力を惹きつけ、育ててきたこと)であるとし、国の国際競争力がクリエイティビティの強さで説明できることを自明のことのように論じつつ、傍証として、図1のランキングが、他の国際競争力に関する研究成果(注1)と似ていることを挙げている。
(注1):フロリダ教授は、図1のランキングと似た結果を示す研究成果として、(1)2004年の世界経済フォーラム(通称ダボス会議)で国際競争力の総合指数として考案されたグロース・コンペティティブネス指数、(2)ハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター教授が95年に公表したイノベーション指数の2005年版(推定値)、(3)コンサルティング会社のATカーニーによる2004年のグローバリゼーション指数、を例示している。
3つの要素の中に「寛容性」が入っていることについては説明が必要であろう。永久に一つの土地に縛られずに動き回ることのできる「技術」や「才能」を、ある場所が他の場所よりも強力に引き寄せる理由として、開放的で包容力があるということも含め、異質な人々を受け入れる「寛容性」(移民、芸術家、ゲイ、ボヘミアン、人種間融和などへの寛容性)が重要であるというのがフロリダ教授の考えである。教授の研究によれば、「寛容性」を持つ地域と、高い経済成長を経験している地域との間には強い相関関係があるという。なお、図1の通り、日本はスウェーデンに次いで2位となっているが、「技術」や「才能」のスコアが高いという点のほかに、「寛容性」の面で、非宗教的な価値観の影響が強い(宗教的価値観が強くない)ことが上位にランクインした理由である。
「クリエイティブ・クラス」が台頭してきた現代社会において、企業にできること、なすべきこととして、フロリダ教授は、職場の QOL(Quality of Life=生活の質)を高めることと、やりがいのある面白い仕事を用意することを挙げている。「クリエイティブ・クラス」を惹きつけ、育て、放さない、という競争で他社に勝つためには、そうした取り組みが不可欠であるという考えである。好事例として、フロリダ教授はSASインスティチュートという米国の会社の具体的な取り組みを紹介している。日本を含め、世界各国に拠点を有するグローバル企業であるが、プログラマーを多く抱えるソフトウエア会社という業種の特性や、非上場企業の柔軟性という特殊性もあるので、本稿では詳細を割愛させていただくが、関心のある方は、参考文献*3、*4をご参照いただきたい。
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