経営者の智恵袋

1.はじめに

「経営者の智恵袋」では、これまで、第3回「従業員重視の経営」をはじめとして、企業にとっての人材の重要性を繰り返し強調してきた。今回は、同じ文脈で、21世紀の企業に求められる人材像として「クリエイティブ・クラス」という概念をご紹介し、あわせて、その概念が、ビジネスモデルも事業環境も異なる様々な企業にとってどういう意味を持っているのかについての、弊社なりの考察をお示ししたい。

2.「クリエイティブ・クラス」とは何か

今年の4月、日本で「クリエイティブ・クラスの世紀」(参考文献*1)という本が出版されて注目されている(米国で2005年に出版された原書の日本語訳である)。著者で米国ジョージ・メイソン大学公共政策大学院のリチャード・フロリダ教授(専門は地域経済開発論)の主張は、以下のように要約できる。

  1. 建築家、美術専門家、エンジニア、科学者、芸術家、作家、上級管理職、プランナー、アナリスト、医師、金融・法律の専門家など、高度にクリエイティブな職に就いている人を「クリエイティブ・クラス」と呼ぶことにする。「クリエイティブ・クラス」に属する人の数はめざましく増えており、米国では、労働者全体の約30%に達している。他の先進工業国でも同様の傾向である。
  2. 「クリエイティブ・クラス」は今後の経済成長を牽引するものであり、国家間、都市間、企業間で世界的に「クリエイティブ・クラス」の獲得競争が展開されている。
  3. 「クリエイティブ・クラス」の概念はエリート主義ではない。すべての人間はクリエイティブであり、労働者のうちの誰が自分の持っているクリエイティビティを利用して報われているのか、あるいは報われていないのかを明らかにするためにふさわしい概念として「クリエイティブ・クラス」を選んだのだ。私たちの社会は、人間のクリエイティビティを部分的にしか活用できていないし、現時点で「クリエイティブ・クラス」を構成する幸運な30%の労働力のやる気を引き出すことにも成功しているとはいえない。これは今後の大きな課題である。

上記のうちで強調しておきたいことは、3にある「すべての人間はクリエイティブである」という点だ。1に列挙されている職種だけを見ると、特定の専門職に就いている人々だけを「クリエイティブ・クラス」と呼んでいるように誤解されるかもしれないが、フロリダ教授の主張は、人間ひとり一人がクリエイティブであり、まだ引き出し得ていないクリエイティビティを引き出すことが、人々の富や繁栄や生活の向上につながるのだ、というものである。あるインタビューにおける彼の発言を引用しておこう。
「現在、我々の経済が活用しているクリエイティブな能力は労働力の三割にすぎません。これを五割、七割、九割と広げていくことです。遅かれ早かれそれを実現する社会が世界のどこかで現れるでしょう。」(参考文献*2)

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