経営者の智恵袋

3.外資系企業による日本企業への資本参加の結果

前節の調査によると、外資系企業に対しては、「国際展開を背景とした競争力や実力のある人材の登用を背景とした優良企業」という正のイメージと、「利益や効率を至上とする冷酷な企業」とでもいうべき負のイメージが並存していることが分かった。では、外資系企業が日本企業に資本参加した結果、何が起きているか。
1つの研究結果として、一橋大学経済研究所の深尾教授らによる参考文献*2がある。この研究では、外資系企業による対日資本参加と国内企業間資本参加につき資本参加後2年間の状況を比較した結果、外資系企業による対日資本参加では資本を受け入れた企業の生産性や収益率が有意に改善しているのに対し、国内企業間資本参加では、資本を受け入れた企業の生産性と収益性に有意な正の効果はなかった、とする。深尾教授は、外資系企業による対日資本参加で生産性が向上していることに着目し、外資と日本企業が異質な強みを持ち寄ることで、より大きなシナジー効果が生じているとコメントしている(参考文献*3)。もっとも、この研究では、国内企業間資本参加においては、資本を受け入れた企業の経営が悪化していたケースも多いという傾向が出ており、そのような企業の業績改善には3年以上を要することも考えられる。従って、深尾教授らも自ら今後の研究課題として挙げているが、資本参加後2年ではなく、より長期間後の状況も調べる必要がある。
参考文献*4も、同様のテーマの研究の結果、同様の結論を示している。具体的には、下記の趣旨の分析論点、分析結果と分析結果総論が示されている。

【分析結果総論】

外資系企業による資本を受け入れた企業は、資本参加実施後、事業効率を改善することで収益率を向上させ、その結果、企業価値を増加させている。これは国内企業から資本を受け入れた企業よりも高い水準にあり、外資系企業による資本参加の有効性を示唆している。
参考文献*5は、個別案件を掘り下げることにより、上記研究を定性的観点から補足するものである。参考文献*4で対象とした外資系企業による対日資本参加案件95件のうち、「出資比率が10%以上」かつ「取締役を派遣している」案件23件を抽出して詳しく見た。その結果、外資系企業から資本を受け入れることの日本企業側のメリットとして、概略、下記5点が挙げられている。

参考文献*5が挙げる上記のメリットのうち、特に「外資系企業という大義名分の獲得」については、まさに単独では手をこまねいていたような所謂「リストラ」を推し進めるための「黒船」効果を期待したものであり、現象面では外資系企業に対する短期思考的なイメージを形成する要因のひとつになっているかもしれない。 以上の研究結果からは、少なくとも外資系企業が、日本企業への資本参加の結果、平均すると効率性や利益の面で成果をあげているらしいということは分かる。しかしながら資本参加後の実態が、外資系企業に対する前記の正のイメージと負のイメージのどちらに近いのかは個別のケースによると考えるほかない。そこで、個別の外資系企業の差異について考えるヒントとして、次節の議論を参考にしたい。

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