経営者の智恵袋

4.抜本的事業転換の実施にあたっての示唆

同社は、平成16年末までには、中期経営改革計画で描いた抜本的な事業転換を成し遂げている。なぜこのような抜本的な事業転換を実現できたのか。この点について同社社長ご自身からは、1.対応が遅すぎなかったこと、2.内部留保が厚かったこと、3.新業態に自信があったこと、の3点が挙げられた。これらの指摘を踏まえ、今後抜本的事業転換を実施する場合のポイントとなる要素を整理する。

  1. 経営者としての、高い見地からのアンテナの重要性

    遅すぎず、かつ具体的な勝算をもって事業転換に取り組む意思決定ができた理由として、同社社長が日頃から、自社の既存事業や既存エリアを超えて、様々な経営者の方々から家電販売やリユース事業に関する地に足の着いた情報を直接収集していた点が大きいといえる。
    言い換えれば、先見性をもった経営判断を行うためには、日頃から、既存事業や既存エリアを超え、自社は今後も大丈夫なのか、自分の今後取り組むべき事業のフィージビリティは確認できるかといった観点での地道な情報収集が重要となる。

  2. 施策パッケージとしての事業転換の実施

    中期経営改革計画は、家電量販店からの完全撤退とリユース事業への転換を図るうえで、本部経費の大幅削減、デンコードーへの一部家電店舗の営業譲渡と一部従業員の転籍、ハードオフ、デンコードーの第三者割当増資など、いわゆるヒト・モノ・カネの観点からの施策パッケージとしての仕立てになっている。各施策は、いずれも想定されるリスクを担保する機能を持っていると考えられ、円滑な事業転換の実施の土台になっていると考えられる。

  3. 徹底した事前検証(フィージビリティスタディ)

    リユース事業への業態転換にあたっては、知人の先行事業者からの納得いくまでの情報収集や、自社でのリユースショップのパイロット展開などの事前検証が実施されている。同社はその結果から、出店シミュレーション等の自らのノウハウを構築している。また債権者やステークホルダーに事業計画を説明するうえでの論拠になっていると想定され、経営者自らが腑に落ちるまで徹底した事前検証は当り前だが極めて重要である。

5.抜本的事業転換の評価

「経営改革の目的は、会社の存続・成長のためであり、引いてはそれが各ステイクホルダーの利益になる」という初期の目的が実現されているかどうかを検討する。
まず会社の成長については、抜本的な事業転換に成功し、今後リユース事業で成長を図る足場は整ったといえる。また債権者にとっては、債務不履行という形で損失を与えているわけではない。
株主にとっては、過去最高の売上高を計上した決算期末の株価は回復していないものの、中期経営改革計画を発表する直前期末(平成16年3月期末)の株価は上回る状況になっている。日経平均株価やジャスダック指数と比較すると、改革計画発表の直前期末(平成16年3月末)から直近期末(平成18年3月末)にかけて同社株価は12.5%上昇しているのに対して、日経平均株価は45.6%上昇、ジャスダック指数は40.5%上昇している。この時点では、インデックスを上回るパフォーマンスは実現できていない。
しかし、直近(平成19年2月26日現在)の株価をインデックスと比較すると、改革計画発表直前期末に対して同社株価が62.5%上昇しているのに対し、日経平均は55.5%の上昇、ジャスダック指数は3.8%の上昇である。インデックスと比較して決して遜色のない水準にある。

一方、唯一従業員については、個々の従業員の判断の結果とはいえ、同社に残ったのはおよそ3分の1となっている。残りの方々はデンコードーへの移籍、もしくは退職する結果となっているわけで、これらの改革を全く痛みを伴わずに成し遂げたというわけではない。しかし、仮に中小規模の家電量販店を継続し、最悪の結果を迎えるリスクがあったとすると、退職した方々も早めに新しい職業に着いた方が長い目でみると望ましいという考え方もできよう。

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