経営者の智恵袋

2.いつ、なぜ、事業転換を意思決定したのか

  1. 抜本的事業改革の目的 ~本取り組みで守ろうとしたもの

    同社社長によれば、「本事業改革で守ろうとしたものは、抜本的事業改革を実施せず家電販売店事業を続けていくことのリスクとの対比での、ワットマンという会社の存続・成長であり、各ステークホルダーの利益であった」という。同社の店舗規模での家電量販店事業に固執していては、中長期的な利益成長は望めない。そうなると、株主、債権者、従業員のすべてが、この抜本的事業改革を行わなかった場合に、実施した場合以上の損失を蒙ることになる可能性がある。従って、短期的には結果として痛みを強いることがあっても、長期的な観点に立てば、早期に実施すべきであるという考え方に基づき、最終的に、事業改革の実行を決断したとのことであった。

  2. 抜本的事業転換の検討開始時期

    中期経営改革計画の発表は平成16年5月である。同社社長によれば平成14年には、「家電量販店ビジネスは需要の伸び悩み、価格競争の激化を背景に、いずれ当社の規模では立ち行かなくなる可能性が高い」という認識を持っていたという。逆算すると、経営改革計画発表の2年前ということになるが、それは同社が過去最高の売上高を記録した翌年ということになる。
    また家電販売事業の将来性にかかる認識は、自社の業績よりも、むしろ全国の同規模以下の家電量販店事業が非常に厳しい現状に直面しているのを、他の経営者との交流のなかで強く認識するようなになったという。

  3. なぜリユース事業だったのか

    現在、家電量販店業界では合従連衡が進んでいるが、当時、同業他社との合併という選択肢もあったと考えられる。その選択をせず、なぜリユース事業であったのか。
    まず合従連衡の道を選択しなかった理由としては、「家電量販店業界は需要の伸び悩みと価格競争の激化による低収益化の根底にあると認識しているわけだが、他社と合併ではその問題解決にならない」という判断があったという。
    また、なぜリユース事業であったのかという点について、「他の地域で、知人がすでにリユース事業を展開していて、その営業データを公開してくれたことから、その分析結果をもって考えれば、必ず成功する自信があった」とのことである。同社は平成14年のリユース事業のパイロット店を出店しているわけだが、その他に、社長個人のネットワークを活かして、リユース事業にかかる情報収集が行われていたことになる。
    同社は、リユース店に転換する店舗を選択するにあたって、フランチャイザーの提供するスタンダードモデルで各店舗の売上高のシミュレーションを行っているが、自らの情報収集あるいはパイロット店舗での検討結果を踏まえ、独自要因を補正している。腑に落ちるまで徹底したフィージビリティスタディがないと、とてもできないことといえる。
    ちなみに中期経営改革計画の発表までは、社長と数名の役員以外には内密に事を進めていた、とのことである。ということは、これらリユース事業のフィージビリティ・スタディは、社長自身が自らの手で実施していた、ということになる。

3.抜本的事業転換の実施

  1. メインバンク・主要株主との調整

    中期経営改革計画の発表の1年前ぐらいから、水面下での下準備として、メインバンク及び主要株主との調整を開始している。幸いなことに、メインバンクの理解は比較的に早くに得られ、主要債権者との調整はあまり難航しなかったという。
    また主要株主は同族者の保有比率が高かったことから、株主総会や取締役会での決議も想定の範囲内で実施できたとのことであった。株主との調整で唯一懸念された、父親でもある創業者からの断固たる反対も危惧に終わり、ふたを開けてみれば理解を示してもらうことができたとのことである。

  2. 従業員の反応と人事施策

    このような抜本的な事業転換を図ろうとする場合、従業員に対してどう対応すべきかについては最も関心の高いところである。
    まず家電事業については、平成15~16年の段階ですでに多くの従業員が家電販売事業の現状・先行きに不安を持ち始めていたことから、その問題に対処しようとすることに理解を示さない従業員は少なかったとのことである。しかし同社は設立以来、家電販売業で成長してきたわけで、従って家電販売業以外の事業に転換することに、拒否反応を示す従業員も少なからず想定されたとみられる。
    この点について、家電販売事業からの完全撤退のパッケージとして、(株)デンコードーへの6店舗の営業譲渡を含めていた。そのため、家電販売業を続けたい従業員はデンコードーに転籍してもらう道を選択してもらったとのことである。
    なお従業員のうち、デンコードーへの転籍希望者が3分の1、新生ワットマンに残るのが3分の1、退職を選択するのが3分の1程度ではないかと考えていたところ、ほぼその通りの結果となったという。早期退職制度等特別なリストラ策は行うことなく、事業転換の実施に向けた体制を整えることができたとのことである。

  3. 資本提携の実施

    平成14年3月期末の借入金は64億円、純資産額は59億円に対して、現金等は44億円である。抜本的な事業転換はそれから1年以内に検討を開始しているわけだが、その時点では、比較的にキャッシュ面での余裕はあったといえよう。にもかかわらず、経営改革を行ううえでは、ハードオフコーポレーション、デンコードーの第三者割当増資(調達額3.5億円)による資金調達を実施している。また、リユース事業のフランチャイザーであるハードオフコーポレーションのメインバンクからは、事業転換にあたっての借入資金面での協力を得ていた、とのことである。

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