経営者の智恵袋

1.背景

近年、上場企業の間で、財務報告や業務プロセスにおいて発生した不正やミスが、社内だけでなく顧客や株主、ひいては証券市場全体に悪影響を与えるといった事態が頻発している。そこで、企業の業務活動の有効性・効率性や財務報告の信頼性を対外的に保証できる手続き・体制を”内部統制”と定義し(*1)、その構築と運用を法律で義務付けようとする動きがある。
米国では、エンロンの破たん(2001年)、ワールドコムの破たん(2002年)を受けて、議会が財務報告の正確性の証明を法律で義務付けた。それが、サーベンス・オクスリー法(SOX法)である。その流れは日本にも波及し、2006年5月施行の会社法および2006年6月に成立した金融商品取引法(以下、金商法)によって、内部統制体制の構築と適正な運用が企業に義務付けられるようになった。金商法に内部統制に関する報告義務(2009年3月期から)が盛り込まれた箇所を指して、日本版SOX法ということが多い。
では、会社法と日本版SOX法の適用は、“誰に”、“何を”義務付けるのか。

2.誰に

  1. 会社法

    会社法が対象者とするのは、大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)と委員会設置会社の取締役会である。内部統制が整備されていないことにつき直接的な罰則規定は特に定められていないが(*2)、何らかの不祥事が発生した場合、「内部統制の不備」として、経営陣が責任を追及される可能性がある。

  2. 日本版SOX法

    日本版SOX法が対象者とするのは全上場企業の経営者である。同法の適用によって、正確な決算書を作成し、社内の管理体制を点検、投資家に報告する責任が、(経理担当者や監査法人だけにあるのではなく)経営者本人にあるということが、一段と明確になる。
    また、罰則も強化され、虚偽の財務報告をおこなった場合、経営者には10年以下の懲役(従来は5年以下)または1,000万円以下の罰金(同500万円)、法人に対しては7億円以下の罰金(同5億円)となっている。

3.何を

  1. 会社法

    会社法の下では、取締役会は、健全な会社経営を行うために必要な内部統制システムの基本方針を決定し、代表取締役と各業務担当取締役は、この基本方針を踏まえ担当する部門における内部統制システムを具体的に決定する義務を負う。さらに取締役会の構成員である取締役は、代表取締役と業務担当取締役が義務を果たしているか否かを監視する義務を負っていると考えられる(*3)。

  2. 日本版SOX法

    日本版SOX法は、経営者に対して、内部統制の規格を提示したり、新たに構築したりすることを求めるわけではない。同法が義務付けるのは、内部統制システムが機能していることを前提に、決算書作成のための内部統制が有効に機能しているかを経営者自らが点検して、内部統制報告書を作成・開示することである (その報告書を会計士が監査し、内部統制監査報告書として作成・開示することも求められる)。 経営者は、内部統制の点検を正確に行ったことを客観的に証明するために、具体的に構築されている手続き・ルールとその点検結果を文書化することを求められる。

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